2013年10月16日水曜日

ラネーフスカヤの煙管

母の知られざるエピソードとして、父と結婚することが決まったときに「どんな女の方が乗ったか分からないから、車は買い替えて下さいな」と言ったというのを最近聞いた。当の本人は例によって覚えていないふりをしていたが、私から見ればさもありなんというか、そういう無邪気な箱入り娘に、山から下りて来た粗野な男が夢中になったのもよくわかる。

煙草を吸う人たちと遊んだあとは、髪に残った煙をお湯で流し、シャンプーを多く手に取ってなじませる。ある人が、煙草を吸う人を評して「火の管理をしたがっている者たち」と言っていたのがとてもあざやかだったので、それ以来、灰皿に灰を落とす人を見るたび「この人は今、小さな火を手中におさめている王様(あるいは女王様)なのだ」と思うようになった。

起きたらものもらいが出来ていて、痛かった。腫れてはいないから大丈夫、と思ったが、腫れていたところで問題もない。しばらく身体と頭を休めることに専念しなければならない。これから薬を飲んでねむるから、暴風雨の音も聞こえないまま、朝が来て目ざめることになるだろう。

ねむりに落ちる前には、欲望のことを考えたりする。自分は今、体力がない、と思っているけれど、本当にないのは欲望なのかもしれない。ねむりたくもないし、おなかも少ししかすかない。まあ、好きな人とは寝たいけれど、買いたいものは特にない。余談だが、官能とは互いに想像しあうことなので、他者の欲望に冷たい人は、男も女も大概つまらない。

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