2013年12月11日水曜日

白いカクテル

新しい髪型かわいいと思うよ、というのは、ここ数日言われた言葉で2番目に私を勇気づけるものであった。長い方がよかった、と言われた翌日に、俺は短い方が好きだな、とか言われるのが人生というものなので、結局みんな自分の好みでしゃべっていると分かってからは好きなように生きようと思っている。好みで済ませてならない部分だけ、守り抜くために力を尽くす。

六本木のライブハウスで、リーディングの公演を観た。あんまり切実さを感じて、笑いが起きるところで私は何度か泣いてしまって、でもちょっと怖くもあって、官能的っていくらかの恐ろしさを含むものだから、これはまさに官能なんだろうと思った。想像であり、恍惚でもある。不穏なギターと、俳優の台詞の音の応酬は、絶頂に向かって同じリズムを強くきざんでいて、それは私のくちびると手の動きによく似ていた。終演して、私は白濁したカクテルを口に含み、舌の裏に溜めてそっと飲み込んだ。

夕方、深緑のコートを買ってしまった。百貨店の隅から「私を買って」と呼ぶ声がしたので、振り向いたらもういけなかった。ひとめ見て「着てみたいのですが」と言ってしまい、袖を通したら後はもうプラスチックのカードを店員に引き渡すしかない状態だった。本当はマフラーが欲しくて百貨店を歩いていたはずなのに、ずいぶん高いマフラーだな、と思った。しかし、そういえば服や靴を買ったあとは、ものが書ける、ということがあったかもしれない。その場合は、新しい服を着る、もしくは眺めながらでないと効果が出なかったように思うので、今、家の中でコートを着ようか迷っている。

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