2013年12月6日金曜日

姫君

MM先輩と会うために出かけた。西荻窪の、南口の、「パン屋」というよりフランス語で「ブーランジェリー」と呼びたいような、そういう店構えの奥のテーブルに二人で座って、ランチをふたつ頼んだ。かごに盛られてきたパンはどれもおいしくて、私は特にバゲットが、先輩はフォカッチャが、気に入った。最近観た演劇の話と、仕事の話と、消失してしまった食欲が戻った切っかけの話などをしながら、年齢が上の女友達を持つべきよ、と先輩は言った。あなたの持つ悩みや身体の変化を必ず先に通っているから、と。そういう女性に、話を聞いてもらうのも聞かせてもらうのも、私にとっては両方大切なことであるだろうと思った。

頭で分かってたって年を重ねないと本当には分からなかったことだらけですよね、と言ったら、まだまだそれは続くわよ、聞きたい?とおちゃめな感じで言われて、でもそれはとても幸せなことだと思った。35歳とか40歳とか、これから私が生きて行く上で、いつまでも若いままの頭でいるわけにはいかない。私は、思えば二年前から一年前くらいまでは、普通に母親になりたいと思っていたけれど、今は全然そうなれる気がしない。精神面の不調もあるのかもね、と先輩は言った。私の人生においてその時期がどうだったか、今ここで語りはしないが、寝ても覚めても子どもがほしい、と思って涙を流すようなことが、女の人生にはあるのだ。だいたいはホルモンのしわざではないかと思う。

その後、先輩と近所をお散歩した。今度ここも行ってみたいね、というお店をいくつか見てまわって、中でも特別素敵な外観の和食屋さんを見たときには心臓がどきどきした。そのあと、有機スパイスのお店でチャイのもととジンジャーエールのもとを買った。身体、あったまるよ、と先輩が言ったので、寒い夜が楽しみになった。そういえば先輩は、かつて仙骨の動かし方も私に教えてくれたので、今でも身体をほぐすときにはよくその体操をする。

翌日も演劇を観て、好きな人にだけ会い、好きなものだけたべた。ただの目立ちたがりは変わっていると他人に言われると喜ぶが、本当の変人は、変わっていると言われると怒ると言う。それと同じ理屈で、本当にぶっ壊れた人はそれを指摘されても、何がおかしいのかわからずきょとんとしているそうだが、どうなのだろう。

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