2014年6月27日金曜日

逃げる場所

言いたいことを心の中に溜めないように、と言われた。でも、いつだって私が喋るより前に、他の誰かが喋り出す。それを聴いている間に、いつも時間切れが来る。私が話を始めても、いつの間にか相手がゆるやかに手綱を取る。言いたいことはあったはずで、自分の話ができないのは機会をつくれない自分のせいだ。黙って相手にうなずいてばかりいるうちに、だんだんうまく喋れなくなってきてしまって、今では誰にも打ち明けることができない話ばかりである。

同じ文脈で、何か感情の「抜ける道」をつくるといいのではないかとも提案されたが、そう思うと私には「逃げ場」がない。 趣味はひとりで出来ることばかりだし、特に他人とおしゃべりしたい欲求もない。素の自分が表にあらわれるのは男の人と寝る時だけだと思うけれども、人に笑って話せるようなセックスはしたことがないし、それは私のひとつの幸福なので改める気もない。

先週は眩暈がひどかった。診察室で女は「それは薬の離脱症状です」と言った。低気圧のせいだけでは説明のつかない不調だったので、彼女がそう言ってくれてよかった。

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