2014年10月26日日曜日

あの人の孫

昔の恋人は、いつの間にか、もうずっと昔の恋人になってしまった。彼が、結婚して子どもを持った夢を見た。夢の中の、架空のFacebook越しにそれがわかるという夢だった。年を重ねて少しふっくらした顔の彼は、子どもを得ていっそう幸せそうに見えた。彼の妻となった女性は、彼と同郷で、私も話には聞いたことのある相手だった。彼女が彼の妻になってくれてとてもよかった、と思ってから、そういう自分の不遜な感想に少しげんなりした。しかし何より、彼の母親がうれしそうに写真に映っていて、私はそれにいちばん安堵した。病気がちだった彼女が、まだ生きて、元気で孫をその手に抱くことができた。彼と別れて数年は彼女にまめに電話もしていたのだ。帰郷していた彼が偶然電話に出て、狼狽したこともあった。だけど、いつしか電話も年賀状も途切れてしまって、彼女が生きているかどうかはもうわからない。もう亡くなってしまったのかも定かでない。まだ生きていたとしても亡くなった後の連絡は私には来ないだろう。そういう後悔と予感を持って思い出す人はあまりいない。だから目が覚めて、今のが夢だったとわかって、本当に悲しかった。

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