2014年10月7日火曜日

傷の救済

「女にありがちなことだけれど」という前置きのあとに「すぐ傷つきたがるよね」と言われて、とてもがっかりしたのを覚えている。女というくくりに私をおさめて発言するような人だったのか、とも思ったし、お前もただの男だったのか、という気にさえなったのだ。

10年近く前、とあるアートプロジェクトへの参加を断念したことがある。当時の恋人が、東京から離れた地方でやるイベントに私が赴くことをかたくなに許さなかったためである。くだらない理由だと思われるかもしれないが、今に至るまで尾を引くほどの強烈な呪縛をかけられ、引きずられた相手だったので、あの時の私にはどうすることもできなかった。私は泣きながら参加をあきらめ、プロジェクトに誘ってくれた友だちのカナコとはその後しばらく合わせる顔がなくて絶縁状態だった。カナコはひとりでそのプロジェクトに参加して、T美大の某パフォーマンスグループFと親密な関係になった。ずいぶん後になってから、私は演劇を見てものを書くことを始め、パフォーマンスグループFの公演にも足を運ぶようになった。そして今、私は10年経って、あの時出会えなかったFのメンバーである女の子に、違う場所で出会うことができた。彼女の稽古場を見て、作品が立ち上がる過程を目の当たりにし、いかに彼女が素敵で飛び抜けていてどこまでも自由か、知ることができた。長く生きて、同じものの側に居続けるとはこういうことなのだ、と噛み締めて、泣いてアートをあきらめたことを後悔しつづけた私も、今やっと救われた思いがしている。

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