2016年7月18日月曜日

ある日(最後の鴻の湯)

最後の朝、鴻の湯に行ったら、毎朝ここに来ているぬしのような女性にふたたび会うことができた。「しばらく来なかったじゃないの」と、洗面台で彼女に言われ、覚えていてもらってうれしさ半分、申し訳なさ半分で「ちょっと体調がわるくて」と笑って立ち話した。ぬしの中で、アートセンターに入れ替わり立ち替わり見知らぬアーティストが来るのは既に日常になっていて「沖縄とか、ドイツとかねえ、城崎の次にみんな行くんだって。もう荷物送りましたーとか言ってね、あちこち飛び回ってるのはだいたいアートセンターの人だわね」と彼女は言った。彼女は鴻の湯を愛しており、風邪など引かないかぎり毎日朝一番に来て湯につかっていく。鴻の湯は火曜日が休みだけれど、その日は他の湯に行く気がしないほど、愛が深いそうだ。一生旅を続けるアーティストたちがいて、この町で生きて死ぬ覚悟の人たちがいる。その交点に、城崎国際アートセンターはある。

0 件のコメント:

コメントを投稿