2018年6月18日月曜日

二度目の謁見(14.06.2018)

早起きしてしまったので、朝食はひとりで食べた。それから8時過ぎにホテルを出て、嘘つき橋の脇の階段を降り、ロウアータウンへ。
 
ウエディングドレスショップが立て続けに並んでいて、東欧風の、日本の桂由美とかハツコエンドウとかには絶対ないようなナチュラルなヴィンテージ感に、見とれていた。こうした、温かみのあるウエディングドレスなら着たい。
 
ああ、なぜひとりで(ひとりじゃないけど)こんな国に来てしまったのか、何もかもが遠すぎて、でもそれはその何もかもを手放したからであって、そうしてこなかったら今私はここに居られないし出会った人々と出会えていないのに、身体が崩れて煉瓦のひとかけらになってしまいそうな気持ちで上を見上げると、窓から白と黒のネコが二匹、顔を出していた。顔だけでなく半身を乗り出しており、のんびりと優雅に町を監視していた。
 
「にゃー」「ミャオー」など様々な鳴き方を真似して気を引き、シャッターに収める。ふらりと現れた東洋人ももともとのこの町の住民も、ネコには関係ないらしい。

両替所に行くも「9時からしかやってない」と言われる。なお、その時、時刻は9:30であった。ルーズベルト。ルーズリーフ。ルーズソックス。(これは「ルーズ」と変換するにあたり入力ソフトが提案してきた3つの単語である)OK, I'll come back later.
 
しばらくのち、両替は無事できた。古着屋さんにお邪魔してはワンピースを試着させてもらったりする。今日の収穫は、今のところなし。薬局で美容クリームを買えるだけ買う。
ボランティアのGS嬢からランチの誘い。広場奥のカフェでスープをふたつ頼む。私は、グリーンのペーストスープにハードボイルドエッグが乗ったもの。GS嬢はグーラッシュ。たくさん話し合い、よい意見と体験の交換ができた。
その後、14:45TK女史とKM嬢と3人でルーマニアレストランでランチ。チョルバというスープを二つ、サルマーレというロールキャベツ、肉とママリーガの盛り合わせでおなかいっぱい。
 
その後、ひとりで町いちばんの評判のジェラテリアでピスタチオアイスを食べる。ふと、スーパーマーケットの側に、特に私好みのおみやげもの屋を見つける。ルーマニア南部のロマ風の赤いストールを買った。
 
幸運なことに、同行者を探していた人をひとり見つけて "The Scarlet Princess" 二度目の観劇。

初日は歌舞伎の花道の横だったため字幕が見づらかったが、後ろの席の見やすさよ!! 助かる。プルカレーテ、やっぱり展開が早すぎるというか緩急が凄まじい。姫が権助に犯されて子供できてから、生まれたときから閉じたままだった彼女の左手が開くのが原作だけど、プルカレーテ版は逆で、もっと早く左手が開いた。
初日から大きく演出を変えた点は、見あたらない。

でも原作だと権助に犯されてから姫が彼に惚れると思っていたのだが、プルカレーテ版にはそのくだりがなかった。犯される→権助の刺青を見つける→惚れて自分の腕にも刺青入れる、が原作だったような……?

プルカレーテ版は、姫が最初に彼の刺青を見つけ、犯されずに自分で彼を誘っていた。
あとでKM嬢が調べたところ、歌舞伎では姫が権助に犯されたシーンはセリフでしか出てこないらしい。犯された時の快感が忘れられずに、姫は自分から権助を誘って、二人は抱き合う……ということで、プルカレーテ版は歌舞伎版に忠実なのかもしれなかった。
あと、白菊と死に損なって、桜姫を白菊の生まれ変わりと信じてつきまとう清玄の気持ち悪さと変態さもなかなかだった。

最初、白菊と清玄の心中の思い出から始まったため、物語は清玄の走馬灯になるのかと思いきや、生命力溢れる桜姫に乗っ取られてしまった。メインテーマは、恋した男が悪人だった女の業だった。

清玄と再会して恋に落ちる話じゃないのは謎だとかねがね思っていたが、しかし、これは白菊とともに死にきれなかった清玄の情けない人生の結末でもあり、その業が彼を幽霊に、最後には化け物にしてしまったのだ。

そう思うと清玄が、始めからひげを長く生やした老人の風貌だったり、黄色の異様な衣装で現れたり、スマートさをいっさい見せさせてもらえなかったのも分かる。死にきれなかった清玄への、罰の物語というのが裏にある。桜姫が清玄を選ばないからあんなにおじいちゃん清玄が暴走してキモくなるのだ。

毒蛇で死んでなお幽霊として姫にまとわりつき、最終的には祟り神のような全身白いモフモフになって彼は死んだ。じじい、モフモフになって死す。

モフモフは実は序盤で、娼婦になる前の桜姫を襲う役回りとして群れで登場していた。おそらくあれは、男性たちの欲望の根源のイメージ。モフモフは刀を股から出していて、あれは男性器のメタファーなのだと思った。それらモフモフを斬り捨てたのが権助であり、のちに姫は彼に惚れたものの、自分の父と弟を殺したのが権助とわかり、権助との子どもも殺し、市中引き回しのあげく権助を撃ち殺した。

引き回しの場面は、ルーマニア革命で殺されたチャウシェスク大統領夫妻の隠喩だろう。そして権助は、チャウシェスクとおなじ銃殺で死んだ。

この作品では、原作の歌舞伎よりも桜姫が強い自立した存在である。そのように「女性像」を書き換えてくれて、プルカレーテ氏、ありがとうという気持ち。桜姫は、搾取する権助をも討ち取って、自らの幸せを手に入れた。赤ちゃんは、可哀想であったが……。

桜姫の衣装が真っ赤である! という強さを改めて感じた 。最後には彼女はキャミソールドレススタイルの衣装を引き裂き、ブッダのような様相になる。あの強さは、レット・バトラーを手放して、自分の道を歩んでいくスカーレット・オハラにも見え、非常に力づけられた。クライマックス、カーテンコールでポーズを決める桜姫と権助のカッコイイことよ。なお、桜姫は男性、権助は女性が演じた。
 
衣装その他については今後随時追記。

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