2014年2月24日月曜日

涙の海

このごろまったく涙が出ない。演劇を観ても、スポーツを観ても、誰かの行動に涙することがない。人が「泣いてしまった」と言うのを聞いたりして「えっ」と思うし「いいなあ、心が豊かで」と思ったりする。などと言いながら、ある夜にぼろぼろに泣いてしまったことを思い出したが、あれは誰かのためなどではなかった。何かが悲しくて泣くことは、しばらくないと思う。そういう涙は冬が来る前に流しつくした。今、私が泣くのは何かを恐れたり不安だったりするときで、そう思うと、涙の理由はより原初的な幼い状態に戻っているのかもしれない。

ただし、好きな小説家が書いた物語の一節に「私、オトヒコさんが好きなんです。好きです、と言ったとたんにわっと泣き出してしまうくらい、本当に好きなんです。」というのが(うろ覚えだけども)あって、それはよくわかるなあ、と今も思う。

子どもの夢を見た。子どもというよりは赤子というような大きさだったが、私の子どもではなかった。従姉の子として現れたような気がするが、それは今いる三人の甥っ子のうち、どの子でもなかった。私の母がその子どもを抱いていて、私はそれを見ていた。子どもの目からふわっと涙が湧いた。湧いたのであって、溢れる、という感じではなかった。まるい涙の粒が、子どもの目頭に溜まったのだ。私は、あ、と思ってティシューを取り、彼の目をぬぐった。涙がしみてティシューが濡れた。そして、私に涙をぬぐってもらった子どもは「ありがとう」と確かに言った。それを聞いた私は、なぜか分からないけど嬉しくて、その子がいとしくなって、嗚咽した。夢の中では、いつも泣いたり叫んだりすることがうまくできない。このときもそうで、声を詰まらせ息も絶え絶えに泣きながら、私は子どもの指に自分の指を絡めてにぎり、抱き寄せようとした。そのとき初めて、彼は私の子どもかもしれない?、と感じた。目が覚めたとき、外はまだ暗く、そこから寝つけなくなってしまってとにかく参った。

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