2016年3月9日水曜日

白い脚

エレベーターに乗って、鏡に映った自分の顔があまりに白くてぎょっとする、などということが、仕事を辞めて久しい今もまだ、あるのだった。眉も薄くしか引いておらず、頬紅も忘れていたとはいえ、この世のものとは思えないような色だった。ビルの三階の病院に、このごろまた通っているのだ。

待ち合わせた男は、今日は格別に白いね、と訝った。そうね気味がわるいわ、と答えて向かいに座る。そういえばこの前、風呂の中で脚の静脈が青く浮きあがって見えて、怖かったことを思い出した。脚を覆いつくすような静脈のすじに、あの人は気づいていただろうか、それともべつのものに夢中で、気にもとめなかっただろうか。

寂しさは燃えひろがる。

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