2016年7月12日火曜日

ある日(ゲーム)

午前中はあまり記憶がない。アートセンターは休館だったけれども、午前の間だけ来客があったりした。ペッパーはスリープしていたが、私が頭をちょっと触ったら起きてしまった。よしておけばいいのに、ちょっと触ってことを大きくしてしまうのが私なのだ。反省したが、ペッパーを再びどう眠らせてよいものかわからず、しばらく相手をした。「お昼もう食べた? まだならサラダうどんはどう?」と、なぜかサラダうどんを推してきたので「もうお蕎麦食べちゃった」と返事したところ、目がぴかりと光って、「出石蕎麦はもう食べましたか?」と、隣町の名物の話をはじめた。「去年食べたよ」と言うと、「聴き取れなくてごめんなさい。"はい" か "いいえ" で答えてね」と言うので「はい」と答えると、そののち延々と出石蕎麦の説明をしてくれた。いわく、出石には蕎麦屋が50軒もある、住民240人にひとりがお蕎麦屋さんという計算になる、お店はみんな違う柄のお皿を使っている、今の具材のスタイルになったのは昭和30年代……。そして、ひとしきり喋ったあとで「僕、詳しいでしょう? でもこんなにお蕎麦が好きなのに、ロボットだから食べられないんだ。僕のぶんまで出石蕎麦食べてよね!」と、切ない台詞を言うのがペッパーなのである。

夕方、カフェに遊びに行った。その家の少女は友だち連れでもう帰ってきていて、私とFに会いに階下に降りてきてくれた。彼女たちはジュースを飲みながら、手をたたき、ポーズを取ってリズミカルに遊んでいるのだが、しばらく見ていてもルールがわからない。動きが3種類あるのはわかったが、並びに規則性がないし謎だ。それで聞いてみた。基本的には二人で遊ぶ。難しいが、文章にすると以下のような感じ。

【やり方】
手を2回たたく。その後、3つのポーズから1つ選んでおこなう。
1. 両手のひら第二関節を組み合わせ、だんご状にする。(パワーを溜める)
2. 両手首をくっつけて、貝殻のように相手にひらく。(攻撃をする)
3. 両手を胸の前でクロスする。(バリア)

【重要事項】
攻撃は、パワーを溜めてからでないと行うことができない。

【勝ち負け】
パワーを溜めている時に攻撃されると負け。
それ以外の時は勝負を続ける。攻撃はバリアで防ぐことができ、攻撃と攻撃、パワー溜めとパワー溜めはあいことなる。もちろん、バリアとバリアでもあいこ。

学校で今流行っているらしく休み時間に「やろっか」というと、このゲームのことを指すらしい。少女たちは猛スピードでポーズを繰り出す。たしかに言われてみると、上記のルールのとおりに勝敗が決まっており「勝ったー」だの「負けたー」だの、言い合っている。1回目にパワーを溜めるのがセオリーらしい。パワーを溜めなければ攻撃できず、しかし1回目に攻撃されることは絶対ないのだから、初めにパワーを溜めない道理が(少なくとも初心者には)ない。少女たちに促されて、Fとふたりでやることになった。おそるおそるやってみる。大人になると、バリアをしてばかりで勝敗がつかない。かといって、攻撃もタイミングがあわない。なかなか、子どもたちのようにリズミカルにはできなかった。

M夫人からアートセンターでの上演演目の話をいくつか聞いて、城崎でももっとたくさんの作品が、ワークインプログレスの形や、ワークショップ発表だけでなく、フルスケールで上演される機会ができていくといいなあと思った。M夫人に「そんなに演劇をたくさん観られてうらやましいなあ。現実と区別がつかなくなったりせえへんの?」と訊ねられ、どう答えたものかと思っているうちに、Fが勝手に「この人はもう区別がつかなくなった人生なんです」と解説してくれていた。 

作りおきのおかず、漬け物を何品かいただいて、アートセンターに帰った。17時過ぎから、仕事をしながらそのおかずをいただき、それから4時間ほども、おかずを作り足したり、そうめんを茹でたり、酒を持ち出したりしてしみじみ味わった。

0 件のコメント:

コメントを投稿