2014年5月3日土曜日

手負いの獣

飲み屋は好きでもあるし、嫌いでもある。秘密を秘密のままにさせてもらえないような、何か喋らされてしまうような事が起きるからだし、人の秘密の心が透けるからでもある。秘密を透けさせない大人ほど、飲み屋の上級者である。この間お会いした紳士は、手駒を何一つ見せないのにこちらの気持ちをするする引き出してしまう技術を使い、澄ましてコップを干していた。彼の前では私のごとき人間は超・若輩者であり、やわらかくしなる彼の言葉に投げ飛ばされ続けるしかなかった。しかし、まったくけがを負わされない本当に巧みな投げ方であり、数日経ってもあれが何だったのか私にはわからないような魔術だった。ちなみに同様の魔術はOY氏なども使うが、OY氏がどちらかといえば黒魔術的なのりなのに対して、かの紳士は完全なる白魔術であり、私をえぐりながらも癒しを残すものだった。

深追いという言葉が好き、と言った私に彼女はその時「でも深追いって、その言葉を使う時にはもうすでにしてしまってる事が多いよね」と言った。同様の言葉に「抜け駆け」があるな、という事には昨日気づいた。

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