片手ですくうように抱けるほどの仔犬を見て、殺してしまったらどうしようと思う。あまりに可愛く小さいのが恐ろしい。もちろん、全然、ぜったい殺したくない。大切に大切に育てたい。でも、ああかわいい、と口にした途端、踏みつぶしたり蹴ったりしてしまいそうだ、という気持ちがすぐ後を追いかける波のようにやってくる。怖い、怖い、と思いながら抱く。くろくとがったうぶげ、しろくてやわらかい腹、その下にあるほそい骨、1分間に200回のみゃくはく、ぜんぶをゆだねるように甘えて跳びはねる、こいぬ。ごはんをあげようとすると、よろこびのあまり立ちあがってバランスをくずし、背中からのけぞってころぶ、こいぬ。
一緒にいても人は孤独なものさ、と言う人がいる。それを了解しあった者同士なら、もしかしたら一緒にいて孤独でもましなのかもしれない。これは例のあれなんだ、人は誰と一緒にいても寂しい時があって、今がその時なんだって、お互いわかることができるだろう。孤独なのが人の真理だとして、そういう孤独すら味わってほしくないほど愛していると、今わかったところでどうにもならない。
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