2016年5月2日月曜日

マンボウの卵

お互い予定もないのでそのまま食事をしに行く、ということになって、京浜東北線から山手線に乗り換えた。山手線には、ひとつひとつの扉の上に液晶モニタがあって、乗客を飽きさせないような広告とかを、映し出している。その時はたまたま雑学の番組をやっていた。「マンボウは一度に8000万個の卵を生みますが、成長するのは1〜2匹です」という内容だった。ほとんどすべてのマンボウは、成長する前に他の魚に食われて死ぬことは、子どもの頃から知っていた。図鑑が好きな子どもだったので。だから、8000万個って少ないな、私が読んだ図鑑には2億個って書いてあった気がするな、などと考えていた。

マンボウ、卵の数で勝負するのやめたらいいのにね。

彼がこともなげに言ったのを聞いて、まずびっくりした。そんなこと今まで考えもしなかった。それから確かめた。

それって、もっと他の手段で生き残る方法を考えるべきっていう意味?

軽くうなずいたようなのが見えたが、その時、山手線が五反田に到着した。そう。そうなんだけど、言ってることは、わかるんだけど。だからだめなんだな、マンボウも私も、と思って返事はもうしなかった。「こっちの方面で合ってるかな」などと言いながら、二人でレストランを目指した。その日は、待ち合わせした場所でカフェにも行ったし、五反田に移動して食事してからも、再びコーヒーショップに入って、それで別れた。その日は5時間、一緒にいた。

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