詩人と電車に乗った。「わたし"戦う詩人"って言われて、何と戦ってるんですかってよく訊かれるんだけど」と前置きをして、彼女は言った。「そんなの自分と戦ってるに決まってるじゃない!」詩人はひらりと電車をおりて港町に向かった。彼女は涼やかな夏の着物をきて、大きな帽子のつばを風に揺らしていた。
二度続けて、嘔吐の夢を見た。子どものころの弟が、きもちわるいとぐずって吐いたのだった。弟のわがままな甘え方は私の気を大変に引き、私はあわてて小さな彼の背中をさすった。弟が子どものころの夢はたまに見る。そのたびに、いつか可愛い男の子を生みたいなと思ったりする。二度目の夢は昼寝の時だった。吐いたのは私自身だったような気がするが、弟のことに比べて記憶するに値せず、ただ嘔吐の夢だったことしか覚えていない。
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