2014年7月9日水曜日

喉に手を

この人ね、あなたと声が似ているって言われるんですよ、と紹介されて、私は少し声を出すのがためらわれたが、相手の女の子はとても優しく、こんな人に声が似ているなんて言ってもらえて私はなんと幸せだろう、と思った。

自分が聴いている自分の声と、他人が聴いている自分の声が違うことに気づいたのは6歳のころで、それはわりに遅いのではないかと思う。幼稚園の卒園記念にみんなで吹き込んだカセットテープで、自分の声が変なのに気づいて戦き、もう絶対に再生しないでくれと母親に頼んだ。それからもしばらく(20年以上も)私は自分の声が大嫌いで、というよりは、喋り方が嫌いだったのだが、とにかく自分の声を聴くのはなるべく避けてきた。このごろになって自分の話し声を文字起こしする機会も増えたが、それと同時に、自分の声を嫌う自意識が消滅しつつある。以前よりゆっくり話せるようになって、抑揚も穏やかになったせいだろう。感情的になるのはごく限られた場合だが、そういう時は今も相手を不快にさせてしまうから、たいてい後悔するのだけれど。

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