好きな人の、昔の日記を、読むのはとても怖いし、気持ち悪い。できれば日記などには近づきたくない。何を食べたとか何時にどこへ行ったとか、手帳に書き留めたメモでも勘弁してほしい。そのことと、私が『痴人の愛』の馬ごっこのシーンが吐き気を催すほど大嫌いであることの、理由は大変近い。疎ましい。いつまで経っても許せない。文字になった以上は、絶対、許せない。部屋にひとりでいると、いろんなことを思い出して(経験していないはずのことまでも)気が狂いそうになる。ひとりの部屋で、私はいろんなものを見つけてしまう。プラチナの指輪、ダイヤのネックレス、女の名前宛の水道料金のはがき、ファンシーな便箋。私は簡単に「狂う」なんて言わないかわり、私が「狂う」と言う時は、本当にそういう時なのだ。
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