2016年2月28日日曜日

サミット

私は44歳で死んでしまうかもしれない、と言ったら彼は、俺は老衰で死ぬイメージしか持てない、と言った。いくつくらいで死ぬの、と尋ねたら88、と言うので、それって私の寿命の倍じゃないかと思って、そんなに先に死んだらいくら何でも忘れられてしまうなと思った。

大人っていやあね、と彼は言う。そうね、とうなずいて、いやだけど悪くないわよね、と呟いた。彼も私も、大人になるにつれて賢くなれた。もう私の背中に翼は生えないけれど、愛に両目を塞がれて、地を這うのもまた悪くない。

ポストをあけると、前の住人宛のカタログが突っ込まれていた。階段をのぼるたび、踏み外しそうになる。ねえ、あたしたちあんまり集まれないからほんとに困るね。今も耳の奥、あなたの声が残っている。

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