「あとで帰ったら話す」などと言ってため息で電話を切るひとは、私と話せるすぐ先の未来を信じて、そう言っているのだなと思う。あなたが帰ってくるまで、私が生きている保証はない。今、すぐに、言わなかったことで後悔したことくらいあなたにもあるだろう。同じことを何度繰り返したらあなたは学んでくれるのか。くちびるの端から流れだしてしまう私の言葉を、不愉快と言って切り捨てること無しに。
調子が悪くなって以来、過去と現在を結びつけるのがむずかしくなっている。昨日の自分は今日の自分だったのか、2年前の自分は今の自分と同じ人間なのか、4年前のあなたを憎んでいた気持ちを忘却できたような気もすれば、1か月前のあの人の顔も浮かばない。毎日お風呂で化粧を落とす。閉じたまぶたを指で撫でて、マスカラの手触りがあれば、その日は人と会った日で、何も塗っていないまつげなら誰にも会わなかった日だ。 今日はたしかにざらついた感触があったのに、何秒も、誰とどこに行ったのか思い出せなかった。
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