架空の町をタクシーで走った。私は犬を三匹連れて帰るところで、紐を三本握りしめ、犬たちとバックシートに座っていた。運転手はトンネルを抜けたところで道がわからなくなったと言い、その間にもメーターは1秒に300円ずつ上がって、信じられないような金額をつけた。私が「交番に行って降ろして」と言うと、運転手は「交番なんてわからない。行ったことのないところには行けない」と泣きべそをかき始めた。私はグーグルマップを取り出して、それは異様に精巧な架空の町の地図だったのだけれども、画面をいくら指さしてもはげでちびの運転手は泣くばかりだった。犬たちはずっといい子にしていた。起きてから、頭の中の地図を少し書き写した。
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