行方が知れず連絡もよこさない男だが、それでも私のことを本当に好きなのだと、占い師が言う。気付くと動悸がして、床に座り込んでから2時間ほども経っている。生きた体は、一時的に目をくらませるだけだ。執着でも愛でも狂気でもなく言うけれど、この目で耳で、信じさせてもらえるなら心も体も生死は問わない。
浅い眠りから覚めて、指先をこわばらせるところまではいつもやる。そこから枕の端に手をかけて、渾身の力で絞り上げる。 明け方に首をしめることくらい、いつだってできる。
40過ぎからだんだん閉経していきます、という文章を読んで、それでは私の生理がなくなるのももうすぐだなあと思ったりする。生殖生殖とか騒いでいられるのもあと10年かそこらで、もしかしたらもっと短いかもしれず、生理がなくなってからどれくらい生きられるのかは分からないけれど、場合によっては初潮から閉経までより長いだろう。そのレベルで見ればいったい何を悩んでいるのかとも思う。生理がしばらく来ていないのだ。低温期が異様に長かったので、生きる力が身体にないのだろう。2時間も3時間も部屋の真ん中で泣き、体力を消耗したところで眠ることもできない。
大型犬をお風呂に入れた。シャワーでびしょびしょに濡らして行くと、ふわふわの犬はぺったりして小さくみすぼらしくなった。愛しい生き物が、濡れて小さくみすぼらしくなっているのはかわいい。観念したようにおとなしくしていて、ときどき私に鼻面を寄せてくる。水が目に入らないように、上手に上を向いている。眠いのにごめんね、でもきれいになると気持ちいいよ、と話しかけながら、押し黙っている犬を洗った。