夜中にねむるのが怖くていやで、だるさを怺えながら何となく4時を待っていた。ベッドに滑り込んで、だましだまし少し寝た。しかしすぐ起きて、お風呂を溜めて入った。9時前からもう一度ねむり、何かを補修するようにたくさん夢を見た。目が覚めたときはまだ10時にもなっていなかった。
もう取り壊してしまった祖母の家の台所に居た。祖母が出てくる夢を見るときは、この台所であることが多い気がする。祖母は後ろを向いて流し台の中に猿のようにしゃがみ、たわしでそうじをしていた。昔よくしていた、三角巾を頭にまいたスタイルだった。その近くには黒猫が二匹いて、布を身体に無理やり巻いて貼付けられたままぎゃーぎゃー暴れていた。その布に絡まっている様子が痛々しいので、どうしてこんなことになっていて、暴れる猫を放置しているのか祖母に聞いたところ、うるさいのでホチキスで猫の皮膚を留めてやったのだ、という答えが返ってきた。(念のためだが、祖母は私が知るかぎりもっとも心優しく生き抜いた女性で、そんなことをするのはありえない)彼女は相変わらず後ろ向きのまま流し台の中にいて、顔を一度も見せてくれず、それはもう祖母ではない、というのが私にはわかった。暴れる猫たちをなだめ、布を取ってやろうと身体を見ると、ホチキスではなく大量の安全ピンで留められているのだった。暴れてめちゃくちゃに騒いでいる猫二匹に「取ってあげるからじっとして」と言うと、少しだけおとなしくなったので、そのあいだに私は彼らの身体から安全ピンをひとつずつ抜いていった。抜くときが一番痛いことを私は知っていたので、ごめんね、今取ってあげるところだから、と話しかけながら作業を進めた。安全ピンの穴のあいた耳から少し血を流しながら、猫の兄弟(二匹は兄弟だったのだ)は生還した。猫たちは急に「これでわかっただろ」「もう行こうぜ」とやんちゃに言葉を話し始め、即座に立ち去ろうとした。彼らが何をわかったのかは知らないが、私はまだ痛々しい二匹の身体を抱きしめ、引きとめた。それでも彼らはどこかへ行ってしまった。
これは昔見た夢の話だが、黒猫が引き出しの中から侵略をしてきたことがある。夢の中で、私の妹と弟はまだ小さくて、実家で飼っていた犬のことも私は守らないといけなくて、その黒猫の侵略をなんとしても阻止しなければならなかった。実は黒猫というのは仮の姿で、何かとてつもない悪いものが小さな黒猫の姿であらわれているだけ、という凄まじい禍々しさを今でもはっきり覚えている。私は、自分の大切な子たちを守るため、黒猫を木の台に叩きつけて殺した。何度も何度も、蘇らないように叩きつけた。今もその感触は忘れない。私は自分の大切な子のためならこうして何かをためらいなく殺す人間なのだ、ということを、黒猫の夢を見るといつも思い出す。
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