電車の中で、狂った女が英語でぶつぶつ言っているのを聴いた。小さな声で、しかし嬉しそうに女はそれをつぶやきつづけている。何かの韻文のようだ、と思った時に"Fair is foul and foul is fair."と女が言ったので、それがシェイクスピアの『マクベス』の一節だということを理解した。女は滔々と、マクベスに訪れる未来について喋りつづけていた。女が狂っていること自体には何も感じなかったが、こんなにシェイクスピアの言葉にぞっとしたことはなかった。狂った女が未来を予言する台詞を喋るなんてただ恐ろしい、と思った。
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