君のいいところは、世界には「意味」に回収できないものがあることを知っているところだ、と彼は言う。ありがとう、同志よ。私は輪郭の端の端まで言葉がほしくて、叶えられない時は相手を見限ってしまいたいくらいに傷つくのだけれど、それは意味の限界をなぞる言葉を聞かなければ、意味の外には触れられないから。あなたはちゃんと、それをわかってくれているのでしょう。
男たちは、眠りが浅いとぼやきながらいつもすぐよく眠る。彼らの寝息や寝返りは、ざわざわして私の集中を削ぐ。眠るのにも集中が必要な時期なのだ。でも彼らは必ず、僕だって眠りが浅いんだよと主張する。
好きだったものをいくつか、怖がらずに思い出す。煙草をくわえて、火をつけるまでの間にちょっと喋る姿、10年目のなじんだスーツの上着、折ったワイシャツの袖、仕事行きたくねえ、とぼやきながら朝、ひとつひとつ身支度していく姿。行きたくねえなあ、と頭を振りながらもう一本煙草に火をつける、あの感じは本当によかった。
生きてるのか死んでるのかわからないような、吐く息の静かな人に抱かれたい。
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