2016年6月25日土曜日

The Heart Asks Pleasure

他の追随を許さない深さで闇を切り開いているね、と言って、古い友だちの数学者が会いに来てくれた。様子のおかしい私を、心配しているわけでもなさそうだった。私は今や感覚の底が抜けて、そんなことしたら世界が終わるからだめって言われたことの全部を、やってもぜんぜん大丈夫だった。

BBCの速報に見入っていて、ふと赤い文字が点滅したので、その瞬間に、世界の何かが決まった。全部開いてないのにどうしてわかるの、と尋ねると彼は言った。開票を測るには誤差の予測が必要で、サンプルが4倍になると誤差は半分になる。

まず学校に入ったら、自然数を習うでしょう。それから足し算、引き算。次に分数の概念が増える。負の数、虚数、複素数。そうやってどんどん要素が増える代わりに、性質の均一性が増すというか、単純性が増すの。たとえば、3は2では割れないけど、分数で細かくしていくと何でも2で割れるようになるのね。わかる? でも、いちばん最初に習う「自然数の全体」っていうやつが怪しくって、みんなが同じ「自然数の全体」を指して話をしているのかってところが、今けっこう問題になっているんだよねえ。「無限」という言葉の向こうに、本当にみんなが同じものを見ているのかは、実はわかってない。

ひとしきり遊んで、数学者は帰っていった。大丈夫、新しいベッドならきっとすぐに見つかるよ、とか何とか、私を励まして。

0 件のコメント:

コメントを投稿