2016年6月4日土曜日

oblivion

メロンの箱を見て泣いていた。子どもの頃、ファミコンカセット屋さんかメロン屋さんになりたかった男の子のことを思い出したからだった。もう、あさりも、えびも、ほたても、メロンも、鰺も買えない。母に言うと、大丈夫よ、そのうち、考えもせずに買えるようになるわよ、と言ってから、もうずっと会っていないという、女学校時代の友人の話をしてくれた。彼女は哲学が趣味でちょっと暗くてまじめで、変わっていた子だったという。

今でもママ覚えてるのよ、その子が、oblivionっていう言葉は素晴らしい、って言ってたの。
……忘却?
そう、oblivion。
不思議なボキャブラリーね。
17歳にしてはね。でもそういう子だったのよ。

私がその言葉を知ったのも17歳だった。言葉の奥にたゆたう忘却の波、あのころうまく想像できるはずもなかった。

It’s calm under the wave in a blue of my oblivion.
Fiona Apple『Sullen Girl』

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