輪郭をなくしたのか、もとからなかったのか、私にはわからない。他者に寄りかかって自身を規定するのはやめなさい、自分を救済できるのは自分しかいないのだから、と彼女は言った。自分のアイデンティティを他人に委ねすぎないようにすること。自分がどうしているときに安定してるか知ること。彼女はいろんな指針を示してくれた。そんなこと、他に誰もしてくれなかった。あなたが一緒にいるべきなのは、今近くにいる誰でもないんだろうね、と空恐ろしい言葉を残し、六本木の路上でタクシーを拾うと、彼女はゴールデン街に向かった。
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