その昔、私が選ばなかった道について、旅館の部屋で弟に理由を聞かれたので、本当と嘘を取り混ぜて答えた。君は君で大変だろうが、私は君の分まで道を開拓してきた自負があるからこれくらいはまあ許せ、と思う。
お風呂上がり、腕の内側に透ける血管を見てなんとなく聞いてみた。
「なんで血管ってこんなに枝分かれしてるの」
「一か所が詰まってもこっちに伸びてれば生きられるでしょ。だから分かれたらできるだけ遠くに伸びるの、血管は」
という真っ当な答えが返ってきて、私は、ふーん、と言って、身体中の静脈の浮き具合を調べてみた。弟はそれから帯状疱疹の症状についてもいろいろ教えてくれたあと、試験勉強に戻っていった。
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