2013年11月15日金曜日

プライベート・スカイラインⅢ

大伯父に昔もらった手紙が見当たらなくなってしまい、かれこれ数年探していたのだが、本棚の奥にそれを挟んだ雑誌を見つけた次の日、彼が亡くなったという知らせを受けた。私はそのとき劇場のロビーにいて、これからレバノンの作家の演劇作品を観るところだった。開演前の暗闇の中で少し泣いて、気持ちを切り替えた。

終演後、劇場の地下階でグレン・グールドのゴルトベルク変奏曲を聞いていたら1時間くらい経ってしまって、そのあいだにいくらか涙も出たようだった。帰ろうと思って腑抜けのように歩いていたところ、知り合いが誘ってくれたので明るい酒席に少し顔を出すことにして、死者について考えながら、生き続けて作品を作っている何人かの人たちに元気づけてもらった。

本棚の奥から見つけた手紙については、近いうちにこの場で引用しようかと思う。

今日は、通夜に行った。彼は入院した日に「こんな顔であなたに会いたくないから」と言って、ホームに戻ったら会う、という約束をしていたのにそれはかなわなかった。棺の窓から顔を見て、その寝顔はとてもきれいで、私に顔を見られるのは不本意だったかもしれないけど、置いていかれるのは私の方なんだから私の心残りがないようにさせて下さいね、と心の中で話しかけた。大伯父の息子たちが入れ替わり立ち替わり現れて、大伯父が家族に私のことをどう話していたか聞かせてくれた。母の従姉が「今までありがとう。まきこさんの顔を見たら急に悲しくなってしまったわ」と言うので、一緒に泣いた。私しか知らなかった彼の顔が、もう誰にも知られることがないことに泣けた。

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