絶望しているあいだは、たくさん夢を見た。
大学卒業以来、音信不通になっている女の子に再会した。どこかの本屋か図書館で、私は彼女を見つけたのだった。「ユリ!」と呼びかけると、彼女は大学時代より少し年を取った、30歳の女の顔でこちらを向いて「あ」と、私の名前を呼び捨てで呼んだ。(当時、私を名前で呼んでいた女の子は、ユリとミズキの二人だけだったのでよく覚えている)どうしているか、ときどき思い出しては本当に会いたいと思っていたので、メモに電話番号とメールアドレスを書いてもらった。彼女が書いた名前は、私の知っている苗字ではなかったので「結婚したんだね」と言ったらユリは「そうなの」と、昔のままの弱々しい微笑みを浮かべた。起きたら、そのアドレスも全部わからなくなってしまっていて、本当に悲しかった。ユリ、どこで何をしているんだろう。幸せになっているといい。
高校の卒業式のやり直しもおこなった。セレモニーの部分というよりは、今もうあまり会わなくなっている友達にサイン帳を書いてもらったり、今度会おう、という約束をしたりした。式が終わって人工芝のあざやかな校庭に出ると、もう時間は真夜中だというのに空は明るく、音楽専攻の生徒たちがうつくしい衣装をまとってミュージカルの名曲をお祝いに歌ってくれていた。
ある劇団(たぶんマームとジプシー?)の新作公演の初日と、楽日を観た。砂浜が舞台で、山型に積まれた海の砂には浜木綿や露草が植えられていた。「この木、初日はなかったですね」と私が言うと、美術担当の女性が「一生懸命植えたんです」と説明してくれた。
小劇場女優の青柳いづみがウエディングドレスを着て立っていた。青柳いづみは、長袖のコットンの白いドレスで、それはそれは可愛らしかった。森に住む、白い花の妖精のようだった。
二十歳のときに亡くなった祖母の死を、もう一度体験したりもした。夢の中で、祖母が死に際して書き残したノートの断片をひとつひとつ読んでいったのだが、残していく飼い犬を心配している一節がいちばん痛切だった。
母と妹とわかりあえなくなって、声をあげたらどうやら実際に叫んでしまったらしく、一度目が覚めた。
ある人に名前を呼ばれているのだが、彼の声は聞こえず、私は振り向くことができなかった。その間、なぜか私は蜜柑をたべ続けていた。
そして起きたときには、すっかり目が腫れていたのだった。
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