朝食の仕度をしにキッチンに行くと、エントランスの方から少女の声がした。何度かこの町で会い、一緒に遊んだこともあるあの子だとすぐにわかって、声をかけに行った。「一緒にあそびたい」と、少女はおっとりと、意志の強さを感じさせる落ち着きをもって言った。「待ってね、今ごはん食べてるから」と言うと少女は食堂に来て、私が朝食をとっている間、自分のはめているおもちゃの指輪や髪かざり、かばんのなかに持っているペンダントなどを見せてくれた。ペンダントのひとつに、彼女の誕生日が刻まれており、それは私の誕生日と一日違いだった。「お姉ちゃんとお誕生日が近いね。もうすぐお誕生日だね」と言うと、まだカレンダーをよく知らない彼女は「どうして?」と問い返してくる。とっさに「だって5歳になってずいぶん経ったでしょう」などと答えてしまう。「もうすぐ6歳だね」と言ってあげると「お姉ちゃんは?」と訊かれて、まあ、嘘を言っても仕方ないから「32歳になるよ」と教えた。少女は、32歳の女というものがよくイメージできないらしく、怪訝な顔をしていたが、すぐに「今日は朝プリキュアやってなかったの。野球だった」と別の話を繰り出してきた。
その時、N嬢が食堂にやってきた。少女は、私とN嬢と3人でおせんべ焼けたかなをしよう、と提案した。それでエントランスのソファに座って、手のひらを差し出しあっておせんべ焼けたかなを5周くらいした。続いてかごめかごめをしたが、ひとりが真ん中で鬼をすると手をつないでまわるのはふたりなので円周が小さくなり、目がまわった。それから、グーチョキパーで何つくろうの歌とか、アルプス一万尺とか、お寺のおしょうさんがかぼちゃの種をまきましたとか、だるまさんが転んだとか、たくさんの遊びをして午前中を過ごした。
お昼は、ちょっとだけ手をかけて料理をしようと思った結果、オムライス。
夕方、近所のフォトスタジオのI夫妻に誘っていただいて盆踊りへ。浴衣の帯がいい感じに締められたので、気分よく歩く。にぎやかな神社に行ったら、ぜひお盆の魂をお送りしたい気持ちがして、城崎音頭にあわせて1時間ほど櫓のまわりをぐるぐる踊った。
戻ってから、食堂で晩酌。打合せを終えたO氏、O嬢も合流して、地酒をいくつか呑みくらべる。あてはオクラ、油揚げ、塩昆布、かつおぶし、梅肉をポン酢であえて冷や奴にのせたもの、ラタトゥイユ、豚肉のみょうが巻き味噌風味など。Fは昨夜の飲み過ぎを反省したそぶりで、なんとその場にいた人々の中でいちばん早く、23時過ぎに部屋に戻って就寝した。反省というよりは、山登りによる足の痛みが残っていたとか、そんな理由ではないかと思う。
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