5歳の少女と交わした約束は重い。その一心で、7時に中学校昇降口でおこなわれるラジオ体操に行った。少女と目が合って、手を振りあった。ラジオ体操第二を、見よう見まねで初めてやった。体をほぐす画期的な動きがいくつか含まれていて、蒙が啓かれる思いだった。そのあと、寺での子ども座禅会にも付いていった。Fはすでに子どもたちと顔見知りで、何だか人気があった。
アートセンターは、大きな貸し館案件が入っていて騒がしかった。今日明日と使用されるらしい。ここが、大会議館と呼ばれていたころから毎年行われている泊まりがけの集まりとのこと。駐車場を整理している人々の中に、見知った若旦那を何人もみつける。旅館組合で、宿泊と運営の対応にあたっているそうだ。荷物だけ置いて、滞在初日に私を駅からアートセンターまで送ってくださった旅館のご主人、H氏を訪ねてお話を訊きにいく。昔の町並みのこと、H氏が城崎に戻ってきた1995年という時代のこと、城崎独特の "世代" の感覚についてなど。
すっかりH氏の旅館に長居してしまい、急いで座禅会をしている寺のそばの、こども園に向かう。座禅会のごほうび会として、そこで子どもたちがピザづくりをしているので混ざる。園長である寺の副住職は、機械に強く、行動力がある。ピザを焼くための石釜は、園庭の隅に副住職がレンガを積んでつくったものである、というのは、町の人から聞いてすでに知っていた。Fは一週間くらいもう座禅に通っていたからいいけど、私は今朝、たった一回しか行っていないのにお邪魔していいのかな、と思った。しかし、次の瞬間にはこども園のぞうぐみの部屋の床に座り、子どもたちと生地をこねて具を選んでは乗せていた。この町では、ためらうよりも先に、人々が受け入れてくれるのだ。園長へのごあいさつは、ごうごうと燃える石釜の前でおこなった。「アートセンターに滞在しているものです。よろしくお願いします。あの、これ、私のピザです」「どうもどうも。ピザ、ここに乗せちゃってください」「はい」という感じで、園長にピザを焼いてもらった。
フォトスタジオの長女が、盆に乗せて焼けたピザを次々にぞうぐみまで運んでゆく。子どもたちの母や父もいて、私に缶ビールを分けてくれた。こども園で、幼児向けサイズの低い木の椅子に腰かけてビールを飲んだ。ご住職もあらわれ、旦那衆、お嫁さんたちが男女のグループにわかれておしゃべりしている中で、私は子どもたちと大いに遊んだ。手をつないで走ったり、でんぐり返しを手伝ったり、絵本を読んであげたりなど。男の子は、楽しくなると熱くなって図に乗り、制御不能になるなあと思った。人見知りの女の子が、私に抱っこされるのを嫌がらなかったのがいちばん嬉しかった。フォトスタジオの三姉妹と、明日もラジオ体操で会う約束をして、帰った。
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