「ああ、そういうことよくありますよ」と女は言った。「一番多いのが、夜中知らない間に何かたべちゃうことですね」と言うので、それはしてないと思います、と答えた。薬が一種類増えた。これだけ医療費を使っているのは今に始まったことではないが、仕事で身体を壊しているのに、仕事で稼いだお金で病院に行くのを悲しく思うことは今もよくある。初めは顔を見るのも嫌だった女のことも、こうなると唯一の味方に思えるものだ。
何日かおきに、料理を失敗してしまう。見た目も気に入らない。今日は塩を入れるのを忘れた。決してたべられないような代物を作っているわけではなく、どちらかと言えば料理は得意なはずなのだが、何となく弛緩しているのだろうと思う。何かが足りない、空洞のような味がする。まあ、今日の場合は塩が足りないので当たり前なのだが、そういうものに限ってたくさん作ってしまって、どうにもならない。おいしい、と言ってくれる人がどれだけありがたくて愛おしいものかよくわかるが、たべてくれる人がいたとしても皆がそう言ってくれるわけではないのだし、ほとんど言ってもらえることなど無いと思って暮らしたほうが身のためである。何だってそうだ。
今日は会いたかった人の誰にも会えず、電話もできずに終わった。来週は会えるといい。
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