2013年10月3日木曜日

午後の虹

夕方、虹を見た。雨もあがってだいぶ時間が経っていたのに、上空の湿り気は残っていたのだろう。思えば、虹を目にするのはいつも夕方4時ごろだ。夏の豪雨はそれくらいの時間にやってきていたし、今日のも。私は、夕暮れの東の空の寂しさには耐えられないと常々思っていて、それは寒々しい薄青がだんだん夜になっていくさまが何ともみすぼらしく見えるからで、でも太陽が西側にある以上、夕方の虹は必ず東の空に出るのだと気がついた。今日はずいぶん長く、あざやかな色が残っていて、空を指差していた子どもたちがいなくなってからも私は立ち尽くして空を見ていた。消えるまで眺めているのも未練がましいし、虹も最期を看取られるのはいやだろうと思い、背中を向けて歩き出した。それでも一度振り返ってしまったのが私の弱さだ。

今朝の夢と言ったらひどくて、起きるべき時間を寝過ごして夜になってしまって泣きそうになるとか、バレーボールをして疲弊するとかいうものだった。昔の恋人が久しぶりに夢に出て、たぶん付き合っていた当時の設定ではなくて、今の年齢で再会したとか、そういう感じだったと思うが、彼の部屋の枕元にプレゼント用に梱包されたアクセサリーがあったのを覚えている。特に何の感情もなく、へえ誰にあげるのかな、と思って見ていたら、何見てんだよ、と怒られたのでそこで萎縮して夢は終わった。今も、同じ空の下に彼が生きているのが何となく信じがたい。椿の花が落ちるように死んだ関係だったな、と思う。

22歳のころ、文芸同人で、中年以降の男女について毎回つたない掌編を書く連載をしていた。叔母、ゼミの先生、老犬。いろんな人々を主人公にした。当たり前だが、今なら全然違う人たちのことを書くだろう。そういうことを、やってみたくなり始めている。

夜遅く、大伯父から電話があった。息も絶え絶えに、身体の調子がたいへん悪いんだ、と言いながら、次いつ来てくれる、と言うので、週末に必ず行きます、と言った。字も書けなくなっているのに、こんな夜に携帯電話のボタンを押したのか、と思うだけで居ても立っても居られない。

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