2013年9月29日日曜日

胡桃の中の世界

その夜は、彼女も私も泣かなかった。そのかわり、日ノ出町の交差点近くのカフェでいっしょに壁にもたれてねむった。私のほうが先に起きたので、追加で温かいウーロン茶を注文したら、カフェのお兄さんに「大丈夫っすか、お疲れみたいで」と言われたけど、疲れてねむかったわけではないので「いいえ、特に」と答えた。起きた彼女と、まだ暗い道を駅まで歩いた。寒い朝だったので、毛布をかぶって寝た。

船から降りてくる人たちを待って、横浜のフィリピンフェスティバルを覗き、いっしょにビールを飲んで鶏肉の焼いたのと、ビーフシチューを食べた。友達のお母さんの得意料理だったアドボを見かけて、食べてみたいと思ったけど、明日家で作ればいいや、と思ってやめた。次の仕事があるからもう行く、と言って立ち上がり、皿とプラスチックカップを捨てにいった人の背中を見送りながら、私はふと
「ねえ、身体の線に合う服より年齢に合う服を着るほうが難しいし、人には必要なことだね」
と向かいに座っていた彼女に言ってみた。
「自分がいちばんよかった時代で止まっちゃだめってよく言うけど、服もそうだね」
と、くだらない話を続けていたら、彼女は前の日の夜と同じ遠い目をしながら、私の最近の予定の詰め方を聞いて、そんなんじゃ将来ママ友ができるか心配だよ、と言った。

0 件のコメント:

コメントを投稿