城崎の町にはつばめが多い。みんな巣の中から人なつこく顔を見せて、卵をあたためている。小さく縮こまっていなくて、雨が降りそうな時はきちんと低く飛んで人々に天気を知らせる。アートセンターの駐車場にもつばめの巣はあって、閉湯まぎわの風呂をもらいにいく時など、夜遅い時間に見上げると、眠る母鳥の尾羽が覗いている。
三姉妹の、三女に会った。道で自転車に乗り、遊んでいるところだった。「大きくなったね」と言うと「もうきりんぐみだもん!」と張り切って教えてくれた。いっしょにいた次女は「前は夏に来たんだっけー」とぽやっとした表情で言い「あっとゆうまだなー」とつぶやいた。急に諸行無常の境地に達したかのような、清らかさだった。彼女が律儀にかぶっている白い自転車用のヘルメットは、ぽってりして可愛かった。園の組分けについては、動物の名前でいろいろ決まっていた気がするのだが、記憶が細切れで思い出せない。三姉妹の母であるところのM夫人に後ほどメールで訊ねたところ、ひよこ→あひる→りす→うさぎ→きりん→ぞうの順番で子どもたちは大きくなることがわかった。つまり、きりん組ともなれば、園ではベテランの域で、憧れのぞう組のお兄さんお姉さんたちまであと一息なのである。三女のからだに漲っていた自信の正体がわかり、思い出してしみじみ、なんと可愛く頼もしい姿であったことかと思った。
昨日の重い荷物のせいで、一日からだと頭が痛かった。夕方早くに仕事をもうやめ、玉ねぎを刻んで炒め、トマトと鶏肉を煮込むことにした。カレースパイスの調合について、アートセンターY氏の意見を伺い、キッチンに置いてある私物の高価なスパイスの数々を見せていただいた。「胡椒はその昔、同じ重さの銀と交換された」という言葉を思い出した。Y氏には、明日カレーをお召し上がりいただき、意見を頂戴する。
七夕の夜、城崎は晴れて、子どもたちの短冊が風に揺れていた。先生の代筆による「パパになれますように」という2歳少女の願いに、こうべを垂れるような気持ちになった。
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