雷と大雨の音で目が覚めた。朝の4:00だった。3時間半後の、朝いちばんのフェリーでスイッチリーダーは帰京した。毎朝、ゆりちゃんが中心になって朝の港で歌を演奏しているのだけれど、今日は雨の中傘をさしながら、スイッチリーダーのためにみんな切実に演奏した。
もう一度眠ることにしたらなかなか目が覚めなくなってしまい、気がついた時には休日の喫茶でパソコンをひらいていた。その時はしっかり歩いていたのだけど、どうやってエリエス荘を出たのかは記憶がない。喫茶は休みで、でも常連客が何人かおしゃべりしに寄ってくれたのは覚えている。コンタクトレンズを入れていないので、顔を近づけないと誰が誰だかわからなかった。14:00ごろマスターが現れてからも意識がはっきりせず、椅子をつなげて横になり、ぐったり眠った。風が強くて火がなかなかつけられないので、煙草で目を覚ますこともできない。風は荒れ狂いつづけ、夕陽の燃えるような時間になるまで、結局頭はぼうっとしていた。
大潮の時期と、嵐のせいで、雨がやんで夜になっても、エリエス荘が水没するかと思われるほどの高波が岸を打っていた。港の防潮堤が閉じられているのを、初めて見た。
近所にもう3年も暮らしている若い画家が、友だちと連れ立ってきてくれたので、エントランスのソファでおしゃべりした。バックでは、ままごとのメンバーたちが明日のリサイタルの練習をしている。画家は巻き煙草を巻いてくれて、何本もくれた。煙草を吸う人がいないから、うれしい、と言ってふたりで何本も吸いながら話した。2013年に最初に坂手に来た時のこと、そのころそっけなかったおっちゃんたちも、翌年2014年になると観光やクリエイティビティに目覚め、掘建て小屋を建ててドライブスルーかき氷屋を始めたとか、かき氷の売り上げがあれば毎日あるだけ飲み代に使ってしまった、とかいう話をいろいろ聞いた。ずいぶん話してから、それでは明日一緒に温泉に行きましょう、という約束をして画家とは別れた。エリエス荘のエントランスには、深夜2時近くまで、トイピアノの音が響き、俳優たちが歌と芝居のリハーサルを繰り返していた。
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